...眞黒に煤(すゝ)けた板戸一枚の彼方から...
石川啄木 「天鵞絨」
...机の上は煤(すす)だらけである...
泉鏡花 「縁結び」
...煤だらけな顔をした耄碌頭巾の好い若い衆が気が抜けたように茫然(ぼんやり)立っていた...
内田魯庵 「灰燼十万巻」
...煤色(すすいろ)の夜霧のなかに...
海野十三 「ネオン横丁殺人事件」
...その雪の白いのに対していかにも煤(すす)けが目立って見え...
高浜虚子 「俳句とはどんなものか」
...煤烟(ばいえん)と風雨によごれたこんくりいと平面の一部に過ぎない...
谷譲次 「踊る地平線」
...おまけに渦巻(うずま)く煤煙(ばいえん)の余波にむせびながら...
寺田寅彦 「時事雑感」
...風は煤煙がとけこんでいて...
豊島与志雄 「エスキス」
...その傍(そば)の煤(すす)けた柱に貼(は)った荒神様(こうじんさま)のお札(ふだ)なぞ...
永井荷風 「妾宅」
...榛(はん)の木(き)の花(はな)はひら/\と止(や)まず動(うご)きながら煤(すゝ)のやうな花粉(くわふん)を撒(ま)き散(ち)らして居(ゐ)る...
長塚節 「土」
...松葉焚き煤火すゝたく蜑が家に幾夜は寢ねつ雪のふる夜も波崎のや砂山がうれゆ吹き拂ふ雪のとばしり打ちけぶる見ゆしらゆきの吹雪く荒磯にうつ波の碎けの穗ぬれきらひ立つかも吹き溜る雪が眞白き篠の群の椿が花はいつくしきかも波崎雜詠のうち薦かけて桶の深きに入れおける蛸もこほらむ寒き此夜は利根の河口は亂礁常に波荒れて舟行甚だ沮む...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...そしてその雪も煤煙にまみれて疲れた色をしている...
中谷宇吉郎 「雪三題」
...煤けた小さい町の屋根が...
林芙美子 「放浪記(初出)」
...彼は煤掃きの時のやうな騒ぎで藁蒲団や絨氈の埃を叩いた...
牧野信一 「F村での春」
...傍を向いて橋の欄干から山を眺めてゐる樽野を呼び返して「いゝ好く見てゐて御覧なさい!」さう云つて煤煙の入つた眼を拭つて貰ふ時のやうに一つの眼をさし出した...
牧野信一 「鶴がゐた家」
...「ぼくもそういう所へは行って見たいよ」煤煙(ばいえん)の町この旅行はほとんど三月かかったが...
マロ Malot 楠山正雄訳 「家なき子」
...また同時に過程の一契機としてその煤介性に於て把握されるとき...
三木清 「唯物史観と現代の意識」
...「なにを塗っていたんだ」「釜戸の煤(すす)です」「おれも信用できなかったのか」「そんなことはありません」とあだこは力をこめて云った...
山本周五郎 「あだこ」
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