...病室は陰気な所となり...
東健而訳 大久保ゆう改訳 「瀕死の探偵」
...売れッ子の若い人気作者の住居(すまい)とは思われない古風な武者窓(むしゃまど)の付いた頗(すこぶ)る見窄(みすぼ)らしい陰気な長屋であった...
内田魯庵 「美妙斎美妙」
...日のささない陰気な部屋が沢山あって...
江戸川乱歩 「孤島の鬼」
...陰気な花嫁さんだと思わず心でつぶやきました...
大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子 「蛇性の執念」
...ただあのお嬢さんは内気で陰気な性質のように思われるが...
谷崎潤一郎 「細雪」
...それはまたしっかりした精悍(せいかん)なそして陰気な顔つきであった...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...陰気な家などを指す代名詞になったであろう...
萩原朔太郎 「小泉八雲の家庭生活」
...再びあの暗い陰気な御方におなり遊ばしたのでございますが...
浜尾四郎 「殺された天一坊」
...陰気な眺めだつた...
林芙美子 「浮雲」
...垢のたまった小指の爪で長い間かかって丹念に掻きとると、陰気な声で、「ま、おあがり、汚くはない」といいながら、べったりと畳の上に置く...
久生十蘭 「魔都」
...縦十六呎の石室のような陰気な物置で...
久生十蘭 「淪落の皇女の覚書」
...陰気な顔つきがますます渋面になった...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「王冠の重み」
...こんにち陰気な家がポツンポツンとよそよそしく立っているに過ぎない...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「諜報部秘話」
...陰気な灰色の空を眺めている...
森鴎外 「あそび」
...黒い冠木門(かぶきもん)のある陰気なような家であった...
森鴎外 「ヰタ・セクスアリス」
...半太夫は二十七八にみえる痩(や)せた男で、ひどく疲れたあとのような、陰気な、力のない顔つきをしていた...
山本周五郎 「赤ひげ診療譚」
...「さあ、――聞いたようにも思うが」「おそのっていうおかみさんがいたって」と云って、静かにおりうは振り向いた、「――お師匠さん、知ってらっしゃるんでしょう」蝶太夫はあいまいに頷いた、「そう云えば、ひところごひいきになったことがあるようだけれど」「うそ仰しゃい」とおりうが云った、「あたしすっかり聞きましたよ」七「聞いたって、なにを」「その人をうまくたらして、三年の余も逢い続けていたって」おりうは溶けるような眼で彼を見た、「その人には病身の良人(おっと)があったけれど、お師匠さんにのぼせあがって、良人の面倒もみず、夢中になって逢曳きを続けていたんですって」「ちょっと、ちょっと待った」彼は手をあげて遮(さえぎ)った、「そんないったいそんなことを誰から聞いたんです」「名がわかれば云いぬけができると思うんですか」「私は芸人です」と彼は坐り直した、「芸人にごひいきは付き物だし、ごひいきなしに芸人は勤まるものじゃあありません」「むさし屋の人もごひいきだけだったの」「少なくとも、おりうさんを知るまえのことです」「そう固くならないで」おりうは微笑し、膝ですり寄って燗徳利を取った、「お酌をしましょう、あら、手が震えてるじゃないのお師匠さん、あたしやきもちをやいてるんじゃないのよ、ただ本当のことが知りたかっただけ」「本当のことを云いましょう」「そんなに固くならないで」とおりうはまた微笑した、「どうぞもう一つ」「おりうさんは」盃(さかずき)を下に置いて彼は屹(きっ)となった、「私の云うことを信用してくれないんですか」「作り話を信用しろって云うの」「むさし屋のごしんぞさんとは、慥かに逢っていました」彼は証言するように云った、「けれどもそれは愛情でもなんでもありゃあしない、ごひいきと芸人のつきあいというだけなんです、貴女だっておよそ察しているだろうけれど、芸人はごひいきのうしろ楯(だて)と、引立てがなければやってはゆけません」おりうはながし眼をくれた、「あら、そうかしら」「派手なしょうばいだから金が要ります、恥ずかしいことを云うようだが、着る物や身に付ける物、なかまのつきあいもあるし、芝居へ出るにしたって表方、裏方、道具方なんぞにつけ届けをしなければならない、たとえば」彼はもの悲しげに云った、「そのつけ届けが足りなかったばかりに、出語り山台が崩れて、けがをした太夫もいるくらいです」「それでむさし屋のおかみさんなんぞも、お金だけがめあてで逢っていたのね」「もちろんですよ」彼は唾をのんだ、「貴女は御存じないだろうけれど、あの女はたいへんな浮気者で、私のほかに男が幾人いたか知れやあしません、尤(もっと)も、――御亭主という人が癆(ろうがい)病みで、陰気な、味もそっけもない人だっていうことだから」「注ぎましょう」おりうは徳利を取った、「飲みながらお話しなさいな」蝶太夫は盃を持った、「ほかに話すことなんかありゃしません、むさし屋の御亭主は血を吐きながら、ごしんぞといっしょに自火で焼け死んだそうだが、金のあるに任せて勝手なことばかりしたから、罰(ばち)が当ったようなもんでしょう」「もっとお重ねなさいな」「因果というものはあるもんだ」蝶太夫は飲みながら続けた、「あのごしんぞをあんな浮気者にしたのも、御亭主の罪でしょう、どっちもどっち、結局お互いの罪でお互いが罰に当った、あの二人が夫婦になったのが、そもそも因果というもんでしょうさ」「それで、――」とおりうが云った、「お師匠さんには罰は当らないのね」「私に罰が」と彼はおりうを見た、「どうして私に罰が当るんです」「いいわよ、めしあがれ」おりうは酌をしてやった、「あとをつけましょうね」そしておりうが立ちあがったとき、廊下の向うから暴(あら)あらしい足音が近づいて来、襖の外で停ると、「こちらに岸沢の師匠はいますか」と声をかけた...
山本周五郎 「五瓣の椿」
...陰気な妓ですよ」「つまり湯島へ寄ったのはその帰りですか」と甲斐が云った...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
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