...その盗賊は逐電して何者とも判明しなかつたので...
太宰治 「右大臣実朝」
...五月三日、酉剋に至つて和田四郎左衙門尉義直さまが討死をなされ、日頃この御四男の義直さまを何ものにも代へがたくお可愛がりになつてゐた老父義盛さまは、その悲報をお聞きになつて、落馬せんばかりに驚き、人まへもはばからず身を震はせて号泣し、あれが死んだのでは、もう、なんにもならぬ、合戦もいやになつた、と嬰児のむつかる如く泣きに泣いて戦場をさまよひ歩き、つひに江戸左衛門尉能範の所従に討たれ、つづいて御一族も或いは討死、或いは逐電、ここに鎌倉の天地震怒の和田合戦も、やうやくをさまり、その夜は由比浦の汀に仮屋を設け、波の音を聞きつつ、数百の松明の光のもとで左衛門尉義盛さま以下の御首を実検せられたとか、将軍家は首実検をおいとひなされ、私たち近習の者と共に御堂に籠つておいでなさいまして、少しくお酒などおあがりになつて、けれども流石にその夜はお気軽の御冗談もおつしやらず、うつむいて何やら御思案の御様子でございました...
太宰治 「右大臣実朝」
...林太郎は召仕などと逐電(ちくでん)はいたしません...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...夜にまぎれて逐電してしまった...
久生十蘭 「玉取物語」
...「逐電(ちくでん)した農奴が欲しいって人はごわせんかな?」「お宅には逐電した奴もおありなんですか?」と...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...おまけに逐電したやつまで合わせると...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...夜中大なる金塊を掘り得て逐電せる者ありという...
南方熊楠 「神社合祀に関する意見」
...「ふんと鼻から息を漏して軽く頷いて」つと座を起って退出したなり逐電したのであった...
宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
...そのように狭くやがては己が身の上に落ちかかって来るに相異ない封建の垣を我から一飛びに飛び越して逐電した...
宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
...あれは天正(てんしょう)十一年に浜松(はままつ)を逐電(ちくてん)した時二十三歳(さい)であったから...
森鴎外 「佐橋甚五郎」
...逐電(ちくてん)するであろうとか...
吉川英治 「大岡越前」
...晩霞(ばんか)に魯(ろ)憲兵も逐電(ちくてん)すること渭州(いしゅう)でも街なかの州橋(しゅうきょう)橋畔(きょうはん)に...
吉川英治 「新・水滸伝」
...他国へ逐電と考えていたが...
吉川英治 「夏虫行燈」
...ご当所を逐電(ちくてん)いたしたらしく考えられますので」すると...
吉川英治 「梅里先生行状記」
...逐電(ちくてん)の支度をしろ...
吉川英治 「八寒道中」
...祇園藤次が逐電(ちくてん)してしまうやら...
吉川英治 「宮本武蔵」
...徳川家を逐電(ちくでん)して...
和辻哲郎 「埋もれた日本」
...彼は殺人後の逐電の場面を日本の国内にではなくマラッカまでの東アジアの海上に求めたのである...
和辻哲郎 「鎖国」
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