...肉の薄くなった肩や胸を恥じるように彼は腕を不自然に動かした...
梅崎春生 「日の果て」
...というのは、原ッぱの真ン中近くまで来ると、どうしたことかその疑問のスキーの跡は、ひどく薄くなって、いや元々古い雪の上に積った新しい雪の上のその跡は、決して深くはなかったのだが、それよりも又浅くなって、なんと云うことだろう、進むにつれ、歩むにつれ、益々浅く薄く、驚く私を尻目にかけて、とうとう空地の真中頃まで来ると、まるでその上を滑っていたものが、そのままスウーッと夜空の上へ舞上ってしまったかのように、影がうすれ、遂にはすっかり消えてしまっているのだ...
大阪圭吉 「寒の夜晴れ」
...春夜春の光りの薄くして...
薄田泣菫 「泣菫詩抄」
...暮靄(ぼあい)の中に富士の薄く出ているところと...
田山花袋 「田舎教師」
...くすんだ地に薄く茶糸(ちゃ)で七宝繋ぎを織り出した例(いつも)のお召の羽織に矢張り之れもお召の沈んだ小豆色(あずきいろ)の派手な矢絣の薄綿を着ていた...
近松秋江 「別れたる妻に送る手紙」
...もっと遠くなるとこの効果は薄くなり...
寺田寅彦 「映画芸術」
...青柳は頭顱(あたま)の地がやや薄く透けてみえ...
徳田秋声 「あらくれ」
...元気な精力的だった岡野の顔が、肉薄く痩せて、色艶がなくなり、陰欝な影をたたえて、それでいて妙に蒼白く冴えて見えた...
豊島与志雄 「操守」
...平素唇が薄く細そりして見え...
豊島与志雄 「理想の女」
...乾板では濃淡(コントラスト)が薄く出るようなものであるために...
中谷宇吉郎 「壁画摸写」
...六角柱の側面だけが薄く発達して...
中谷宇吉郎 「雪後記」
...どれもこれも薄くて...
夏目漱石 「三四郎」
...縁側の戸袋の薄くらがりの中へしゃがみこみ...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...そして、予期されることは、普通ではない風変わりなことよりも、印象が薄くなり、重要性が少なく思われる...
デイビッド・ヒューム David Hume 井上基志訳 「人間本性論(人性論)」
...「僕も昔はずゐぶん硬い方だつたが……今ぢやもうこんなに薄くなつたよ……」それから詩人は彼にこの夏も湖畔へ行くかどうかと訊いた...
堀辰雄 「顏」
...大川の奥さんは皮膚も皮下組織も薄くて軟かで...
森鴎外 「魔睡」
...炊事場のながしも薄く凍っている...
山川方夫 「待っている女」
...「濃すぎたら薄くしますわ」「起きなくってもいいのに」「口をきいてはだめ」とおしのが云った...
山本周五郎 「五瓣の椿」
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