...」九「そこの旅宿(やどや)の角まで、飯田町の方から来ますとね、妾(わたし)、俥(くるま)だったんですけれど、幌(ほろ)が掛(かか)っていましたのに、何ですか、なまぬるい、ぬめりと粘った、濡れたものが、こっちの、この耳の下から頬へ触ったんです...
泉鏡花 「薄紅梅」
...ゴム引きの濡れた手術衣を着て...
江戸川乱歩 「孤島の鬼」
...それが水が垂れる様な濡羽色の大丸髷...
関根金次郎 「本因坊と私」
...ぐっしょりと濡れた法衣(ころも)の中から手を出して...
田中貢太郎 「海坊主」
...昨夜の泣き濡(ぬ)れた顔とは...
徳田秋声 「仮装人物」
...濡(ぬ)れ手ぬぐいが頭に巻かれた...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...彼が例の通り半ば濡れ鼠になって学校から帰って来た時...
豊島与志雄 「香奠」
...曇り加減になつた日がうらゝかにまたさしくるので松葉の濡れたのがほゞ乾いた...
長塚節 「我が庭」
...あるときは水の溜(たま)った溝(みぞ)の中に腰から下を濡(ぬ)らして何時間でも唇(くちびる)の色を変えて竦(すく)んでいた...
夏目漱石 「満韓ところどころ」
...濡れ鼠になつて歸つて行きました」「それつきりか」「三人目は小三郎さんで――これは雨が小止(こや)みになつてから...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...濡れた着物は無かった筈で――裸体でやったんですもの...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...ゆき子を濡れた外套ごと抱きかゝへて降ろしてやると...
林芙美子 「浮雲」
...泥べたの上でずぶ濡れになり争ひあつてゐる女の姿が雨の中のスパアクのやうにおもへた...
原民喜 「飢ゑ」
...その口元にある手紙の二三通は雨がしみ込んで濡れて居た...
平出修 「公判」
...「濡れましたわね...
北條民雄 「癩を病む青年達」
...雪子の念入りにブラツシをあてられた睫毛が濡れたやうに沾んでゐるのを見た...
牧野信一 「ダイアナの馬」
...しめやかにこころの濡(ぬ)れぬ川霧の立ちまふ家はあはれなるかな (晶子)そのころ世間から存在を無視されておいでになる古い親王がおいでになった...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...濡れ燕のように駈け込んだ...
吉川英治 「剣難女難」
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