...「しめおん」は思はず遍身に汗を流いて、空高く「くるす」(十字)を描きながら、己も「御主、助け給へ」と叫んだが、何故かその時心の眼には、凩(こがらし)に揺るる日輪の光を浴びて、「さんた・るちや」の門に立ちきはまつた、美しく悲しげな、「ろおれんぞ」の姿が浮んだと申す...
芥川龍之介 「奉教人の死」
...この女も定まった路を歩いて来たのだ――旅鞄(たびかばん)を膝に載せて、やつれた、悲しげな、しかし艶(なまめ)かしい、居睡(ゐねむり)を初める隣の女...
石川啄木 「心の姿の研究」
...やがて悲しげな顫(ふる)える声が「……せ...
大阪圭吉 「三狂人」
...いつからそう云う悲しげな色を浮かべるようになったかと云うと...
谷崎潤一郎 「猫と庄造と二人のおんな」
...何とも云われないほど悲しげな...
ディッケンス Dickens 森田草平訳 「クリスマス・カロル」
...この悲しげな微笑はいまだに忘れる事が出来ない...
寺田寅彦 「雪ちゃん」
...彼らの舞台でなんと悲しげな顔をしていたことだろう!……パリーの著作者らは...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...一種のおびえたようなまた悲しげな色が顔に増していた...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...何か悲しげな叫び声があがった...
林芙美子 「風琴と魚の町」
...殆ど悲しげな調子でそう応じながら...
堀辰雄 「風立ちぬ」
...ルイスヒェンは現われた……この悲しげな醜悪に飾り立てられたかたまりが...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「ルイスヒェン」
...悲しげな顔をしてつめたい風のなかを出かけていきました...
ルイザ・メイ・オルコット L. M. Alcott 水谷まさる訳 「若草物語」
...昨日自分達の仲間を失ひながら案外別に悲しげな様子もなく煙草(たばこ)を吹かせてゐた...
宮地嘉六 「煤煙の臭ひ」
...悲しげな皺枯れ荒んだ声でうたうのである...
室生犀星 「幻影の都市」
...――そして父親は父親でまだ見たこともない悲しげな眼色をしていたからである...
室生犀星 「みずうみ」
...(c)暗き顔せる悲しげなる不遜よ...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...あのうす暗い日蔭の地面やいじけた枝ぶりのもの悲しげな楢の木々はもうこの世ではふたたび見ることができないのだと考えて...
山本周五郎 「日本婦道記」
...」秋蘭は何かこのとき悲しげな表情で参木の胸に手をかけた...
横光利一 「上海」
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