...貞世がその日学校で見聞きして来た事などを例のとおり残らず姉に報告しようと...
有島武郎 「或る女」
...そう思ってるかな」「姉さんとは血のつながりはないの」「肉親の姉さんじゃない?」「あたしはおっかさんの連れ子なの」そんな会話をしながら――身をいれて波子の話を聞いてなかったわけではなく...
高見順 「いやな感じ」
...此の事件は、まだ、他の親戚(しんせき)の者には知られていないようだが、いまのところでは、姉さんの味方は、お母さんに、チョッピリ女史...
太宰治 「正義と微笑」
...あなたの姉妹(シスター)の名前を付けるつもりだと言われましたね? 何とお付けになります?」と...
橘外男 「ナリン殿下への回想」
...私はその棗の木の下へ仕掛けのある箱を置いて、二つ三つ得意の奇術をやり、それから石を投げて鳩(はと)にして飛ばしたところで、(ふうう)とさもおかしくてたまらないと云うような嘲(あざけ)り笑いをする者もあるのです、私は怪(け)しからん奴だと思って、見ると赤い帽子を著(き)た、顎髯(あごひげ)の白い、それもまばらに生(は)えた老人が笑ってるのです、私は後の詞(ことば)によっては、撲(なぐ)り倒してやろうと思って、その顔を睨(にら)みつめると、(若旦那、そんな小供のするような奇術は駄目ですよ、私の奇術を見せましょうか)と云うのじゃないですか、私は腹が立つし、種も仕掛けもない手ぶらの老人が、気の利いたことができるものか、何かやらして、気の利いたことができなかったら、大(おおい)にとっちめてやろうと思ったので、(そうか、では、やってもらおう、お前さんは、どんなことができるのだ)と云うと、老人はにやにや笑って、(若旦那、私にはなんでもできますよ、私は若旦那を猿(さる)にしろとおっしゃれば、ほんとうに猿にしてみせますよ、しかし、まあ、それよりも、一ばん早いところをお眼にかけましょう、若旦那、その大きな棗(なつめ)の木を枯らしてみましょうか)と云うのです、いくら奇術が巧(うま)いからと云って、立木(たちき)が枯らされるものでない、私は老人がでたらめを云って、私を笑わせて銭でももらおうとしているのだな、と思ったので、ますます腹が立って、(よけいなことを云わずに、この棗の木が枯らされるなら、枯らしてもらおう)と云いますと、老人は十字架をかけたように首にかけていたプラチナの鎖をはずして、その鎖に附けてあった小さな袋を出し、それを右の手の掌(てのひら)に握ってから、(それ、すぐ枯れますよ)と云って、その手を上にあげて棗の木を呪(のろ)うとでも云うようにすると、どうでしょう、今まで青あおしていた棗の葉が急に萎(しお)れて来て、棗の実がぼろぼろと落ちるのじゃありませんか、私はびっくりして驚くと云うよりも恐ろしくなったのです、すると老人は、(どうです若旦那、私の云うことに嘘はないでしょう)とすまして云うのです、(私が疑ったがわるいのです、どうか許してください)私はしかたなしに老人にあやまったのです、すると老人は、(若旦那が判ってくだされるなら、この木を枯らすも可哀そうですから、活(い)かしましょう)と云って、この手を横に二三度動かすと、今まで落ちていた棗(なつめ)の実が落ちやんで、萎(しお)れていた葉がみるみる青あおとなるのじゃありませんか、私は老人を神様のように思って、奇術の箱などは、もう打っちゃらかしといて、老人を上へあげて、父も母も呼んで来て引き合せたうえで、大(おおい)に饗応(ごちそう)をして、その日から老人にいてもらおうと思って、老人にそのことを云ってみると、老人は、(若旦那の御親切はありがたいのですが、私は家族を伴(つ)れておりますから、一人こちらで御厄介になることはできません)と云うから、その家族も伴れて来ていっしょにおれと云っても、(いや、また御厄介になります、私の法術は若旦那のお気に入ったように思われますから、そのうちにお教えします、しかし、これは手品と違って、不思議な術ですから、腹(はら)が出来ないとお教えしても駄目(だめ)です、そのうちに若旦那に腹が出来たなら、何時(いつ)でもお教えします、これからちょいちょい遊びにあがります)と云って、いくら止めても帰って往くのです、居処(いどころ)を聞いてもそのうちに知れると云って云わないものですから、私は老人をますます豪(えら)い異人だと思うようになったのです、それから老人は、二日隔(お)き、三日隔きに、どこからともなしに飄然(ひょうぜん)とやって来ては、石を蛙(かえる)にしたり、壁へ女の姿を現わしたりして見せて、その後(あと)で饗応(ごちそう)を喫(く)って帰って往ったのですが、それから一箇月ばかりすると、私の家に大きな不幸が起ったのです、午後の茶を飲んでいた父が、病気でもなんでもないのに、そのまま倒れて亡くなったのです、私の家は他に近い親類もないので、母が雇人(やといにん)を指揮して、やっと葬式(とむらい)をすましたところで、父が亡くなってから十日目の朝になって、その母がまた宵に寝たままで亡くなっているのです、これは後で判ったのですが、そんなことを知らない私は、もう力にする者はその老人一人だと思いまして、母の亡くなった後のあとしまつは、一いち老人に相談したものです、それでも老人は、私の家に泊(とま)るようなことはしなかったのです、すると、ある日のこと、老人が壮(わか)い可愛らしい女を伴れて来たのです、それが老人の女(むすめ)です、その女(むすめ)は三度老人に伴(つ)れられて来て、三度目に私の家に泊ることになったのですが、私と女(むすめ)との間は、その晩からもう他人でなくなったのです、しかし、これは恐ろしいわなだったのです、父も母もその妖賊(ようぞく)の手に死に、私もその手に死のうとしていたのです、私は翌日、その女(むすめ)が帰ると云うので、送って往ったのですが、女(むすめ)の家は入江の水際(みずぎわ)に繋いである怪しい舟です、私はそのまま舟の一室へ閉(と)じ籠(こ)められるように入れられたのです、もし強(し)いて帰ろうとしたなら、女(むすめ)の姉の使う剣(けん)と、老人の毒手(どくしゅ)が待っているのです、女(むすめ)の姉は跛の醜い女でしたが、七本の短剣を使うのです、後(あと)から後から空に投げあげるさまが、魔神の手がそれを手伝うように思われたのです、私が往った時、老人はその姉女(あねむすめ)を呼んで、饗応(ごちそう)だと云って剣を使わせたのですが、それは私に死の命令をしたものです、しかし、女(むすめ)は私をかばってくれたのです、何も知らない私は、老人がどうしても帰さないので、しかたなしに泊って、夜中比(ごろ)に一度目を覚ましてみると、次の室(へや)で女(むすめ)が姉と激しく云い争っているのです、(あまり可哀(かわい)そうじゃありませんか、私は厭(いや)です、あの方は、私に免じて助けてやってください)その声の後から姉の詞(ことば)がするのです、(あんな男にふざけやがって、痴(ばか)、お前が厭なら、私がやるよ)私はその夜(よ)殺されようとしていたのです、私は歯の根もあわずに顫(ふる)えてると、隣(となり)の声はすぐ聞えなくなって、ひっそりとなったのです、私は私に好意を持っている女(むすめ)がどうかして助けてくれると宜(い)い、もし金で往くことなら、自家(うち)の財産を皆投げ出しても宜いから、それを女(むすめ)に話して、助けてもらおうと思っていると、夜(よ)の明け方になって、そっと女(むすめ)が入って来て、黙って私の手に鎖の附いた小さな袋のような物を握らして、(これは私の父の持っている靺鞨(まっかつ)の玉(たま)です、もし、危険なことがあれば、これを揮(ふ)ってくだされば宜いのです、これさえあれば、何事でも思うとおりになります、これを持っとれば、もう父も姉も、あなたに害を加えることはできないのです、帰ってください、もう、これっきりお目にかかりません)と、云ってから、女(むすめ)は泣きだしたのです、私は心に余裕があれば、何か云ってやったのですが、まだ恐ろしさが除(の)かないものですから、そのまま急いで戸を開けて舳(みよし)に出たのです、気が注(つ)くと老人の呻(うな)るような怒る声が聞えていたのです、もう黎明(よあけ)で東のほうが白くなっているのです、私はそれから家に帰ったのですが、女(むすめ)のことが気になるし、老人のこともうすきみがわるいので、五六人の壮(わか)い男に銃を持たして、入江の岸へ往ってみると、逃げたのか舟はもういなくなっていたのです、私はそれでも女(むすめ)のことが気になるので、その後(のち)も人を頼んで詮議をさせたのですが、とうとう判らなかったのです、その玉は木の葉の形をした瑠璃紺(るりこん)の石です、その玉を手に入れた私は何をしたのでしょう、私には金がたくさんあったので、強盗の真似(まね)をする必要はなかったのです、私はそれを女に用いたのです、私は知事の奥さんとも、公使の奥さんとも、市長の姉女(あねむすめ)とも、歌妓(げいしゃ)とも、女優とも関係したのです、そして、それが世間の問題になりかけた時、マニラ生れの日本人だと云う歌劇の一座が来たのです、私は性懲(しょうこ)りもなくまたその座頭(ざがしら)だと云う女優に眼をつけて、それに関係をつけたのですが、その女優のために、その玉を盗まれてしまったのです、私は世間の攻撃が煩(うる)さいし、その玉が惜(おし)いので、一切の財産を金にして、それから十年あまり……」洋服の男がそれまで云いかけたところで軽いゴム裏(うら)の音がした...
田中貢太郎 「港の妖婦」
...それでも僕はこの機会を逃すことが出来ないのです僕はこの間から一遍姉上に手紙を上げようと思っていました...
谷崎潤一郎 「細雪」
...今までのようにルーズな姉の生活と...
徳田秋声 「挿話」
...姉妹たちの手前恥ずかしかった...
徳田秋声 「挿話」
...その人と姉との間に起ったこんな交渉のなかに引絡(ひっから)まっている古い自分の影法師は...
夏目漱石 「道草」
...その青い光が姉の顔になった...
原民喜 「焔」
...用(よう)ある折(をり)は廓(くるわ)の姉(あね)のもとにこそ通(かよ)へ...
樋口一葉 「たけくらべ」
...妻は姉が来て芝居へつれだしたとかで小女(こをんな)が独り留守をして居た...
平出修 「公判」
...姉妹たちはつらいでしょうが...
ルイザ・メイ・オルコット L. M. Alcott 水谷まさる訳 「若草物語」
...姉の千賀は十八歳...
山本周五郎 「思い違い物語」
...それは畑姉弟を誘拐しようとしたそこもとの...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...姉なぞは御丁寧にも...
夢野久作 「少女地獄」
...求太郎も勉強しておったか」「ええ、毎日、お姉様も、私も、お勉強しています...
吉川英治 「大岡越前」
...このいじらしい角兵衛獅子の姉弟(きょうだい)――なんと...
吉川英治 「鳴門秘帖」
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