...「どうだね、お前にゃ見覚えはねえかい」女房はそわそわと落ち付かぬ容子をして、亭主と同じように切(しき)りに思い出そうとしていたが、出し抜けに、囁くような声でこう云った...
モオパッサン 秋田滋訳 「親ごころ」
...その子は出し抜けに立ちどまって...
モオパッサン 秋田滋訳 「寡婦」
...出し抜けになぞ見たようで?」「なアに...
岩野泡鳴 「耽溺」
...列車は出し抜けに止められたが...
江戸川乱歩 「一枚の切符」
...両方が無言で、相手の悪さの証拠固めをしているような危険、一枚の札(ふだ)をちらと見ては伏せ、また一枚ちらと見ては伏せ、いつか、出し抜けに、さあ出来ましたと札をそろえて眼前にひろげられるような危険、それが夫婦を互いに遠慮深くさせていたと言って言えないところが無いでも無かった...
太宰治 「桜桃」
...……私も、無理な話だと思っていたわ」その頃、師匠さんは軽井沢の別荘のほうにいらしたので、そのお別荘へお断りの御返事をさし上げたら、それから、二日目に、その手紙と行きちがいに、師匠さんご自身、伊豆の温泉へ仕事に来た途中でちょっと立ち寄らせていただきましたとおっしゃって、私の返事の事は何もご存じでなく、出し抜けに、この山荘にお見えになったのです...
太宰治 「斜陽」
...尤も、四五年前にもこれによく似た身分違いの方面から雪子を望まれ、皆が飛び着いて調べて見ると、先方の家庭に不倫な事件のあることが知れて、愕然(がくぜん)としたことがあったので、貞之助は、今度もあれのようなのではなかろうかと疑い、菅野未亡人の好意は分るが、何だか少し人を馬鹿にしたようなところがある、順序も蹈(ふ)まないで、出し抜けに、会ってやるから出て来いなどと云うのは失敬ではないかと、憤慨したような口調で云ったが、でも、何と云っても今度の話は二年三箇月目の、久し振の縁談なのである...
谷崎潤一郎 「細雪」
...出し抜けにぎゅッと五体を呪縛(じゅばく)した感じ...
谷崎潤一郎 「武州公秘話」
...廃藩置県の御沙汰にはちょっと出し抜けを喰われたのであるが...
内藤鳴雪 「鳴雪自叙伝」
...出し抜けに船長を斬(き)ったりするやつは...
葉山嘉樹 「海に生くる人々」
...出し抜けにこう言い出した...
堀辰雄 「風立ちぬ」
...それから出し抜けに止まって...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「見えざる力」
...死んだようになっていた父親が出し抜けにもくりと蒲団(ふとん)に起き上って...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...飛び込もうとした闇太郎――出し抜けに呼びかけられて...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...)本当にあんまり出し抜けだもんですから...
ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 森鴎外訳 「家常茶飯」
...そのうち出し抜けに荒々しい谷の穴へ落ちて見えなくなった...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...」と出し抜けに声がする...
吉江喬松 「木曾御嶽の両面」
...出し抜けを食わされておる」小波の城は...
吉川英治 「私本太平記」
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