...其の方を向くと船渠(ドック)の黒い細い煙突の一つから斜にそれた青空をくっきりと染め抜いて...
有島武郎 「かんかん虫」
...其の方が余程利益なのだ...
アンリイ・ファブル Jean-Henri Fabre 大杉栄、伊藤野枝訳 「科学の不思議」
...私は其の方に入った...
高村光太郎 「回想録」
...新三郎はやるともなしに其の方へ眼をやった...
田中貢太郎 「円朝の牡丹燈籠」
...其の方はどう思う」「へい」と云ったが...
田中貢太郎 「海神に祈る」
...決して其の方たちにお咎めはない...
田中貢太郎 「海神に祈る」
...必ず其の方面に向つて進むことは明かである...
内藤湖南 「北派の書論」
...若し其の方法にして獨りこゝに遊ぶ人間に對して訓示するのみに止まらず...
永井荷風 「十年振」
...彼は其の方面の教育を受けてもいるし...
中島敦 「光と風と夢」
...従って随分屡々其の方面の経験は有りましたが...
西尾正 「陳情書」
...当時は一切其の方面の女には興味を失って居る時でしたが...
西尾正 「陳情書」
...其の方面の智識のあはれな私には分らなかつた...
沼井鐵太郎 「黒岩山を探る」
...「それでは其の方の猫をここに連れ参れ」と御奉行様が仰言いました...
浜尾四郎 「殺された天一坊」
...滅相も無い」殿様が「イヤイヤT「心配致すな其の方の娘に立派な仇討をさせてやる」老臣も呆れ果てた...
山中貞雄 「武蔵旅日記」
...殿様が、T「其の方、真は武士であろう?」乞食はポカンとして居るが、殿様は独り悦に入って、T「敵討であろう喃?」エッ? と乞食は分らないが、殿様の独り合点は尚続く...
山中貞雄 「武蔵旅日記」
...暫時があいだ其の方に於てお預かり申し奉るべし...
山本周五郎 「長屋天一坊」
...「これがその曲者だな」武士はこう云って、御落胤の全貌を眺め、ぐっと凄いような声で訊問(じんもん)を始めた、「これ、其の方はなに者で、名はなんと申すか」「――へ、へ、へ……」「若殿様には早う、早う御上意遊ばされましょうぞえなあ」「黙れ女、控えおろうぞ」武士は大喝(だいかつ)した、「これ返答をしろ、其の方はなに者であるか」「あ、あた、あたい、ごやくいん……」「はっきりと申せ、なに者で名はなんというか、紛らわしきことを申すと、おのれ、容赦はせぬぞ」「あたあたあた、あたあた」御落胤はまっ蒼になり、震え上って手を合わせた、「あ、あたいは、なんにも知やないんだよ、ごめんだよ、たたた、たんまだよ、や、や、やなやな」「口も満足にきけぬのか、この馬鹿者」「そだそだ、そ、みんなねエ、そう云うんだよ、馬鹿め、うす馬鹿めってよ、ほんとだよ、柳原じゃみんな、知ってゆよ、あたいお貰いをしてたかやね、嘘つかないよ」「なんと、……なんと」武士は眼を瞠(みは)った、「其の方は柳原で乞食をしていたと申すのか」「乞食じゃないよ、おも、おも、お貰いだよ」「その辺まことに御艱難(かんなん)、まことにお痛わしき」「黙れ吾助、控えおらぬか、これ馬鹿者、それでは其の方、柳原に於(おい)て乞食をしておった、しかと左様であるか」「乞食やないって云うのにさ」うす馬鹿としては、侮辱に耐えられないのらしい、「乞食はね、源公だの房州だの太市のことだ、ほんとだよ、あたいはお貰いなんだかや、ほんとだよ、みんな知ってゆよ、阿母さんは土堤のおかんてってさ、そいつだって乞食じゃなかったんだかやね、やっぱいお貰いでしかやね、ほんとでしかや、みんな知ってゆんだかや、あたいは土堤のうす馬鹿でしかやね」「生得(しょうとく)の愚か者とみえる」武士が苦い顔をしたことは云うまでもない、「では其の方なぜ此の家へ来ておる、なぜ柳原でお貰いをしておらんのだ」うす馬鹿は、べそをかいた...
山本周五郎 「長屋天一坊」
...ジロと其の方へ眼をやった...
吉川英治 「魚紋」
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