...油の様にとろりと腐敗したままに溜って居る塩水の中に...
有島武郎 「かんかん虫」
...早瀬は、甘い、香(かんば)しい、暖かな、とろりとした、春の野に横(よこた)わる心地で、枕を逆に、掻巻の上へ寝巻の腹ん這(ばい)になって、蒲団の裙に乗出しながら、頬杖(ほおづえ)を支いて、恍惚(うっとり)した状(さま)にその菫を見ている内、上にたたずむ蝶々と斉(ひと)しく、花の匂が懐しくなったと見える...
泉鏡花 「婦系図」
...そのとろりとした水面に秋雲の影を宿していた...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...今までいた鯉はもういなくなって鉛色の水がとろりとなっていた...
田中貢太郎 「水郷異聞」
...淡色のとろりとした液体の小瓶を...
豊島与志雄 「話の屑籠」
...竜之助は、そんな考えで飲んでいるのではない、舌ざわりの、とろりとして、含んでいるうちに珠玉(たま)の溶けてゆくような気持を喜んで、一杯、一杯と傾けている――蚊遣火(かやりび)の烟(けむり)が前栽(せんざい)から横に靡(なび)き、縦に上るのを、じっと見ている様子は、なんのことはない、蚊遣火を肴(さかな)にしているようなものです...
中里介山 「大菩薩峠」
...その焼酎にも富岡はとろりと酔つて来た...
林芙美子 「浮雲」
...うっとりとろりのしたきりすずめ)豊はちいちく...
原民喜 「藤の花」
...しんととろりとするようないい声でござンしたが...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...とろりとした流れの中へ...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「ヴェニスに死す」
...しんとん とろり岐阜提灯岐阜提灯を軒のしたつるしてそつと眺めてりやしづかな夢を見てるやう...
水谷まさる 「歌時計」
...僅かとろりとした時...
宮本百合子 「一隅」
...しんがとろりでどうも頭の中が湯気の立つようで...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...おじさまをとろりとさせてあげるわ...
室生犀星 「蜜のあわれ」
...中央の大鍋いっぱいにとろりと溶け崩れた小豆餅...
横光利一 「夜の靴」
...おれはとろりと、寝ていたらしい」「いい度胸だの...
吉川英治 「大岡越前」
...ただとろりと煮とかして熱いごはんへかけたりもする...
吉川英治 「舌のすさび」
...とろりと、したかしないか、と思ううちに、はや戸を繰る音が玄関でする...
吉川英治 「梅里先生行状記」
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