...今日はただもうぬれた着物を脱いだような気分であった...
伊藤左千夫 「水籠」
...広い眼界がただもう一面に黄色なその窪地と空だけでいっぱいになっている...
伊藤野枝 「転機」
...ただもう恐れ入っている...
海野十三 「二、〇〇〇年戦争」
...ただもうレンズと鏡の日々(にちにち)を送ったことであります...
江戸川乱歩 「湖畔亭事件」
...雨後の華厳の滝のところは、ただもう、にこにこしてしまいました...
太宰治 「風の便り」
...ただもう眼前の酔いどれの客を救おうとして...
太宰治 「貨幣」
...ポローニヤス、君は、ご自分では気が附かず、ただもう、いらいらして、オフィリヤの失態に極度に恐縮してみたり、かと思うと唐突に、正義だの潔癖だのと言い出して子供たちのお先棒をかついで、わしたちに当り散らしたり、または、遽(にわ)かに忠臣を気取ってみたり、このたびのオフィリヤの事件を転機として、しどろもどろに乱れていますが、それは君のきょうまで堪えに堪えて来た或る種の感情が、いま頗る滑稽な形で爆発したというだけの事です...
太宰治 「新ハムレット」
...私たちだって、ただでものを食べさせていただこうとは思っていません、畑のお仕事でも何でも、うんと手伝わせてもらおうと思っているのに、そのお手伝いも迷惑、ただもう、ごくつぶし扱いにして相談にも何も乗ってくれないし、仕事がないからよけいも無い貯金をおろして、お手伝いも出来ぬひけめから、少し奮発してお礼に差出すと、それがまた気にいらないらしく、都会の成金どもが闇値段を吊(つ)り上げて田舎の平和を乱すなんておっしゃる...
太宰治 「やんぬる哉」
...子供達はただもう心から悦んで校長に暇を告げた...
ディッケンス Dickens 森田草平訳 「クリスマス・カロル」
...私はただもうふるえているばかりです」「あなたが自殺を見つけたのはいつ頃ですか?」「彼は毎朝早く...
コナンドイル 三上於莵吉訳 「入院患者」
...ただもう酒を飲むより外はなかった...
豊島与志雄 「怒りの虫」
...私はただもう縮こまってしまった...
豊島与志雄 「憑きもの」
...ただただもう感じ入つてゐた...
新美南吉 「良寛物語 手毬と鉢の子」
...祖父の叔母がよく話したことぢやが、ただもう、やんややんやといふ騒ぎで! 娘たちは上を金モールで巻いた、青や赤や桃いろのリボンで拵らへた頭飾(かんむり)をかぶり、縫ひめ縫ひめを赤い絹絲でかがつて小さい銀の花形をつけた薄いルバーシュカを身につけ、背の高い踵鉄(そこがね)をうつたモロッコ革の長靴をはいて、まるで雌孔雀のやうに軽快に部屋ぢゆうを踊りまはつた...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...お前は十銭のただもうけをしたというようにいうて...
正岡子規 「くだもの」
...それでただもう一しんに姫の姿を眺めていますと...
三上於兎吉 「艶容万年若衆」
...お姉さまはただもう遠慮して...
山本周五郎 「めおと蝶」
...ただもう二、三日考えさして頂きたいだけなのです...
夢野久作 「少女地獄」
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